月刊誌『さぽーと』2005年8月号 -寄稿文-

  地域社会全体で、市民総ぐるみで、この地に福祉の理想郷を実現する──。それを合言葉に、名張市は障害者福祉をはじめとした福祉全般に取り組んでいます。そして福祉の理想郷づくりは、名張市の総合計画が目指している第一の目標でもあります。
名張市は三重県の西部に位置し、大阪のベッドタウンとして発展してきた地方都市です。人口は約八万五千人。市町村合併の道は選ばず、単独の市として持続的発展の道を探っています。障害者福祉の面では、平成十年から十四年までの五か年計画「名張市障害者福祉計画~夢をもち共に暮らせるまちづくり~」を策定し、具体的な実践を進めてきました。

地域に根づいた福祉の精神

名張市の障害者福祉を振り返ると、全日本精神薄弱者育成会が全国の障害児・者を対象として昭和三十三年に開設し、現在は社会福祉法人名張育成会の手で運営されている名張育成園の存在が重要な位置を占めています。名張育成会は地域の中核的施設として、名張市障害者福祉計画でも大きな役割を果たし、計画の重点であった施設整備や在宅サービスの充実におおいに力を発揮してくれました。
また同会は、知的障害者を施設内だけでなく地域社会で生きる存在と位置づけ、その具体化のためにグループホームへの移行を積極的に推進しましたが、これは名張市が目指している「地域で共に暮らす」というテーマの力強い実践でもありました。
平成十六年度には、精神障害者の生活支援センターや通所授産所の整備も行われ、その結果、障害者の社会参加や自立支援が大きく進展しました。一人ひとりの相談に応じる生活支援センターの力が大きく発揮されたもので、それらの活動を支える各法人にも深く感謝しているところです。地域社会に福祉の精神がしっかりと根づいていたことが、障害者福祉の充実を支えてくれたものと認識しています。
教育面では平成八年、名張市を含む伊賀地域の悲願であった県立養護学校・伊賀つばさ学園が市内に開校され、障害児教育が格段の進展を見ました。同校は地域に開かれた施設としてすっかり地域社会に溶け込み、名張育成園に並ぶ中核的施設の役割を担っています。

総合計画と地域福祉計画

平成十六年三月、名張市は新しい総合計画を策定しました。策定にあたっては、「あれもこれも」ではなく「あれかこれか」に徹して、暮らしやすさに特化した生活者起点のまちづくりを進めることを目標とし、福祉の理想郷づくりを計画全体の柱としました。
そして、総合計画の中心には、国のモデル事業として認められた地域福祉計画を据えました。この計画では、「ともに生き ともに創る 心ふれあう 幸せのまちを目指して」を合言葉としてさまざまな施策を展開していますが、住み慣れた地域で生涯生活ができる環境づくりを進めること、そして、障害を持つ人が単なる福祉の消費者ではなく、福祉の生産者として地域福祉の担い手となれるような施策を展開することが、大きな目標となっています。
地域福祉計画には、福祉関連の▽高齢者福祉計画▽障害者福祉計画▽健康なばり21計画▽次世代育成支援行動計画──の四つの計画を緊密に連携させていますが、そのうちの障害者福祉計画では、国の制度改革や障害者のニーズに対応し、地域に根づいた福祉の精神をより大きく育むために、発達障害や子供の療育に力を入れた施策や、自立に向けた就労対策の確立が重点的に進められています。
市民ぐるみで福祉の理想郷づくりを進めていくことの確認と合意形成のため、今年五月二十八日には「地域福祉キックオフ大会」も開催し、さまざまな関連団体が連携を深めました。まさにキックオフ。全国に誇り得る福祉のまちづくりへ向けて、ボールが大きく蹴り出されたところです。

(財)日本知的障害者福祉協会/発行
-月刊誌『さぽーと』2005年8月号№583-掲載-

名張市長  亀井利克
平成17年9月