民間非営利法人と情報技術の調査報告書

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はじめに
日程と訪問先
調査内容
1)NPOと行政の協働について
NPOの現状
チャータースクール
ヒューストン子供博物館
ルイジアナ子供博物館
フェリーバンク子供博物館
2)情報技術の集積と活用について
アバブネットデータセンター
PAIXネットデータセンター
サニベール市役所
CNNセンター
3)宇宙開発の現状と展望について
ジョンソン宇宙センター
調査のまとめと今後のとりくみ
1)NPOと行政の協働について
2)情報技術の集積と活用について
3)宇宙開発の現状と展望について

はじめに
平成12年度三童県議会米国調査団は、8月2日から10日まで11日間にわたる海外調査を行い、オークランドをはじめとしたアメリカ合衆国の諸都市を訪問、NPO(民聞非営利法人)とIT(情報技術)を主要なテーマとして調査を重ねた。本冊子はその報告書である。

今回の調査は、県政が抱える重要課題のうち、「協働」と「情報技術」とをテーマに選んだ。いずれも県政の根幹にかかわる問題であり、停滞を許されない課題でもある。

協働に関しては、アメリカ合衆国はまさに先進地であり、「大きな政府から小さな政府へ」を合言葉として、政府と住民の協働による地域づくりがさまざまに進められている。今回はとくに、地域社会が青少年育成にどのような形でかかわっているのか、NPOによるチャータースクールや子供博物館の試みをつぷさに調査した。わが国が直面 している教育の問題にも、貴重な示唆を得られたものと思われる。

一方、情報技術もまた、わが国の最重要課題のひとつといえるが、いわゆるITの集積と活用によって経済の活性化を図ることは、県が独自に取り組むべき課題でもある。情報技術のデータセンターやインターネットの現状など、各都市の事例を詳細に知り、県政の参考となるべき点が多いことを実感した。

なお、調査に際しては関係機関・団体などさまざまな方のお力添え、お骨折りをいただいたが、とくにヒューストンにあるジョンソン宇宙センタ一では、センターに重要なかかわりをもつ在米邦人の方からご紹介をいただき、センター内を特別に見学することができた。今年11月には、同じくその方の斡旋でアポロ17号の船長、ジーン・サーナン氏が来県される運びになっていることを付記しておく。

平成12年9月

三重県議会議員
岩名秀樹(団長)  西場信行  島本暢夫  森本繁史  亀井利克

日程と訪問先

1日目 8月2日
名古屋空港→ポートランド(オレゴン州)→サンフランシスコ(カリフオルニア州)
2日目 8月3日
オークランド(カリフォルニア州)
訪問先:チャータースクール/日本太平洋資料ネットワーク
3日目 8月4日
シリコンバレー(カリフォルニア州)
訪問先:PAlXデータセンター/アバブネットデータセンター/サニーベール市役所
4日目 8月5日
サンフランシスコ→アトランタ(ジョージア州)
5日目 8月6日
アトランタ(ジョージア州)
訪問先:フェリーバンク子供博物館/CNNセンター
6日目 8月7日
アトランタ→ニューオリンズ(ルイジアナ州)
7日目 8月8日
ニューオリンズ(ルイジアナ州)→ヒューストン(テキサス州)
訪問先:ルイジアナ子供博物館
8日目 8月9日
ヒューストン(テキサス州)
訪問先:ジョンソン宇宙センター/ヒューストン子供博物館
9日目 8月10日
ヒューストン→ポートランド
10・
11日目
8月11日・12日
ポートランド→名古屋空港

調査内容

1)NPOと行政の協働について

NPO(民間非営利法人)活動はアメリカ各地で広範かつ多彩に展開されているが、今回の調査では青少年の健全育成と地域住民のかかわりに焦点をあてた。少子化が進行する一方で少年犯罪が深刻化し、教育制度の抜本的な見直しを望む声も強くなっているわが国の現状に照らして、もっとも切実なテーマのひとつと判断されたからである。具体的には、NPOの手で設置され、運営が進められるチャータースクールと子供博物館を対象に、地域と青少年育成とのあり方を探った。

  • NPOの現状
  • チャータースクール
  • ヒューストン子供博物館
  • ルイジアナ子供博物館
  • フェリーバンク子供博物館
NPOの現状

●調査NPO団体:日本太平洋資料ネットワーク
8月3日、オークランドにて調査。事務局長・ 柏木宏氏と担当者1名の協カを得た。

アメリカの現状

柏木事務局長から、アメリカにおけるNPOの現状について説明を受けた。NPOは州政府に法人申請を行ってNPO組織として認められ、税制優遇措置を受けている。法人となっても通 常の企業のように配当は行わず、利益をすべて事業拡大に注ぎ込める点が、活動の大きな支えとなっている。
また、税制の優遇によって企業などからの寄付を受けやすくなっていることも、NPO活動を支える基盤として見逃せない。通 常、法人申請には20分から30分という短時問で認可が降りる。税制優遇申請には数か月を要し、毎年全米でおよそ2万件の申請が行われるという。

発展の背景

アメリカ合衆国でNPOが急速に発展した背景には、行政サービスに関する認識の劇的な変化があった。ルーズベルト大統領によるニューディール政策以降、連邦政府の権限拡大に基づく政策を推進したアメリカでは、必然的に政府のなすべき業務が膨張し、身動きのとれない状態に至った。これを打開すべく、共和党のレーガン政権が打ち出したのが「小さな政府」ヘの移行であった。
小さな政府とは、政府が担う責務を最小限におさえ、残りは民間が手がけるという行政サービスの新たなあり方を示す言葉である。政府が担うベき責務は人の生存を最低限保証するためのサービスだけと位 置づけ、具体的には国防、警察、病院など、生死にかかわる分野と税の徴収とに限定、そのほかの多種多様なサービスを民間団体や地域住民、すなわちNPOが担当することで、大きな政府から小さな政府への移行が進められた。

行政との関係

この小さな政府においては、単純に図式化すれば、政府ないし行政は税の徴収とその使途の企画を行い、企画の実施はNPOが行うことになる。NPO支援のための民間サポートセンターが設置されており、NPOがそれぞれの企画をセンターに伝えて補助金を申請すると、センターはこれを受け付けて審査を行ったうえ、NPOに財政的支援を与える。それによって、それぞれの団体が事業を進めるということになる。
最近では政府自身もNPO支援団体のひとつとなっており、民間サポートセンターを支えている。この場合、政府を批判するNPOであっても、政府は変わりなく支援を行う。政府はあくまでもNPOが実施する事業を支援するのであって、NPO組織そのものを支援するのではなく、NPOが契約どおりに事業を実施すれば、政府はその団体の主張にはかかわりなく支援を行うという考え方が浸透している。

税制の優遇

NPOが抱える問題としては、税制優遇措置が悪用されることが想定される。これを防ぐため、法人格をもたせて責任の所在を明確にする、州の司法省に専門の担当宮を配置するなどの措置が講じられている。しかし、たとえば高級車やヨットなど高額な物品をNPOに寄付し、税金の控除を受けようとする納税者がいた場合、その税制優遇の評価が難しいこともあるという。

多様な連携

行政はそのシステムによる制限からいわゆる縦割りの活動が主体となるが、NPOは互いに連携することで横割りはもちろん、さまざまな結びつきを選んで清動を進めることが可能である。その実例は、チャータースクールと子供博物館に見ることができる。

チャータースクール

●調査NPO団体:カリフォルニア東湾岸地域自然保護団体8月3日、オークランドにて調査。事務局長のジョナ・レノン氏、コーディネーターのコンネ・パッケード氏、プログラマーのミッシェル・スミス氏の協カを得た。

新しい学校

チャータースクールとは、近年アメリカでひろがりを見せている新しいシステムの学校で、学区などの特別 の認可を受けて設立され、独自の理念による教育を進めている。「特許状」の意味をもつ「チャーター」を冠して、チャータースクールの名で呼ばれる。  調査先のNPO、カリフォルニア東湾岸地域自然保護団体は1983年に設立され、理事会は100人で構成、年間1100万ドル(約11億円)の予算を有している。名のとおり自然保護をテーマとする団体であるが、活動の一環として1993年、チャータースクールを開設した。開校の背景には、公立学校の教育方針に満足できない、あるいは画一的な知育偏重教育に疑問を抱く地域住民の声があり、いわば私立学校の精神をもった公立高校が開校されることになった。
なお、チャータースクール発祥の地は、ここカリフォルニア州とのことである。

日常の活動

このチャータースクールの対象は、18歳から24歳までの高校退学者が中心である。カリフォルニア州は高校までが義務教育となっているが、さまざまな理由で中途退学に至る生徒が増加し、ホームレスとなる可能性も少なくないことから、大きな社会間題となっている。
チャータースクールはそうした高校退学者を受け入れ、職業を身につける環境を提供することで、彼らの自立をうながすことを目的としている。全校生徒は200人。開校の目的からも明らかなとおり、知識を偏重せず実践を重視するのが学校の方針で、知識をもっているかどうかより、実践できるかどうかが評価の基準となる。
日常の活動は、サービスラーニングと呼ばれる実践と体験が主体で、青少年団体や障害者団体を対象にした奉仕活動、さらにはNPOの斡旋による商業リサーチなど、多様な実践と体験が進められる。通 常、生徒4人から8人と教員1人がひとつのチームを結成して作業を行い、週に34時間がこのサービスラーニング活動にあてられる。この活動には報酬が支払われ、生徒は年間5000ドル(約50万円)の手当を手にするという。
週5日間のうち、3日間がサービスラーニングの日で、残り2日問が教室での授業となる。月に1回はワークショップが開かれ、人前での話し方や各種書類の作成方法など、社会で必要な基本的知識が手ほどきされる。
このように教育内容は知育偏重でないにもかかわらず、政府が実施する学力標準テストでは高い成績を収めており、そうした点にも教育関係者の注目が集まっているという。1クラス15人から20人と、行き届いた教育が進められる体制であることも好成績の要因と考えられる。

認可と運営

チャータースクールの開設は、州の学校区ごとに設置されている教育委員会に申請し、認可を受けて進められる。認可の条件は、教師が教員資格を有すること、危険なフィールドワークは行わないこと、財政的自立が可能であること、最低限のカリキュラムを実施すること、などである。州からは年間200万ドル(約2億円)の補助金が出されるが、教育委員会は5年ごとにスクールの存廃について検討し、その結果 認可が取り消される場合もある。
スクールを運営するNPOは、理事会、教員、父母、地域関係者で構成されている。職員は40人で、年間給与は250万ドル(約2億5000万円)が必要。スクール運営費用は、3分の2が州政府の補助、残り3分の1をNPOが負担するが、企業からの直接奇付もある。校舎はレンタルで、工場を改造した施設である。

私学との違い

私学の精神をもった公立学校と表現されるチャータースクールだが、私学との最大の違いは、チャータースクールには学費が必要ないことである。また、サービスラーニングに対して年間5000ドル(約50万円)の報酬を手にできることも大きな違いといえる。一方、公立学校とも良好な競争関係にあり、一般 の公立校よりチャータースクールの方が平均学力が高いことは先述のとおりである。

ヒューストン子供博物館

●調査NPO団体:アソシエーション・ユース・ミュージアム
8月9日、ヒューストンにて調査。事務局長の夕一ミー・ケーン氏の協カを得た。

参加と体験

博物館(ミュージアム)といえば、わが国では収蔵品の展示を主目的とした施設を思い浮かべるが、今回の調査で訪れたアメリカ合衆国の博物館は、そうした概念をくつがえす施設であった。主眼はあくまでも入館者が参加し、体験することに置かれており、日本の博物館が「静」とすれば、アメリカの博物館は「動」の印象が強い。そのことをまず冒頭に述べておきたい。
ヒューストン子供博物館は1992年に開設され、建築費は1500万ドル(約15億円)。政府の援助はいっさいなく、運営費は、NPOと民間からの直接寄付で2分の1が、入館料と館内売店の収益によって残りの2分の1がまかなわれている。年間45万人の来館者があり、年間の運営費は450万ドル(約4億5000万円)。その半分が人件費にあてられる。
運営委員としては、NPOメンバーが41人、ほかに大学教授、医者、企業役員などのアドバイザーが50人。実際に運営などの業務に携わるスタッフは45人、パートタイマーが60人という体制である。パートタイマーには大学生、高校生、障害者のほか、企業の研修として働く会社員の姿もあった。

充実したプログラム

博物館の運営はプレイルームでのワークショップに重点が置かれており、日替わりの内容でさまざまな催しがくりひろげられている。参加・体験型のブースも充実している。各ブースでの催しは企業や個人が担当しており、工夫をこらした内容でどれも人気が高い。
プログラムでは、就学前の子供たちとその親を対象にしたものがとくに充実しており、具体的には子供の五感を発達させることに重点を置いているという。子供たちの個性に合わせて弾力のあるプログラムが組まれており、教育に対するきめ細かな配慮がうかがえた。
また、経済的な理由などで博物館に入館できない子供たちのために、博物館側から子供たちのもとに出張してブログラムを実施することもつづけられている。

ルイジアナ子供博物館

●調査NPO団体:マック・グレイシー・スタッフ・オート
8月8日、ニューオリンズにて調査。コーディネーターのベキー・マンザー氏の協力を得た。氏は、日本の上智大学に1年間留学した経験をもっている。

多彩なワークショップ

ルイジアナ子供博物館は1988年に開館した。施設は倉庫を改造したものである。運営は10人のスタッフと25人のパートタイマーで進められ、年間約20万人が来館する。運営費はすべて入場料と館内売店の収益でまかなわれ、公費による助成は受けていない。
館内は参加・体験型のブースで占められており、興味深い「謎」を手がかりとして科学や物理に親しむブース、子供たちが商店やレストランを訪れて店員などとのやりとりを体験できるブースなど、いずれもさまざまな企業によって提供されている。ブレイルームでのワークショッブも多彩 で充実している。

フェリーバンク子供博物館

8月6日、フェリーバンクにて調査。

個人による経営

フェリーバンク子供博物館は、実業家のスーザン・ネウケント氏が事業で得た利益を社会に還元し、子供たちのために開設したもので、あくまでも個人経営の博物館である。
開設は1992年。自然をテーマとした常設展示が3分の2、テーマ展示が残り3分の1といった内容で、調査当日はアフリカにスポットをあてたテーマ展示が行われていた。ブースはすべて参加型で、映画上映のコーナーもある。館内にはレンタル用の部屋もあり、結婚式、パーティ、ワークショップなどに需要が多いという。

調査内容

2)情報技術の集積と活用について

めまぐるしい革新がつづく情報技術の世界でも、アメリカ合衆国はその最先端を走っている。情報技術の改革が現代社会にどのような変化をもたらし、人と人、人と物、人と社会の関係にどのような影響を与えるのか、それを探ることは現代の国家にとっても地域社会にとっても、最重要課題のひとつである。さまざまな要素を含む情報技術の分野で、今回はとくにインターネットの活用に重点を置き、調査を行った。
調査地は、カリフォルニア州サンフランシスコから南へ約48キロメートルの地点にあるシリコンバレーである。シリコンバレーは11の都市からなるサンタクララバレーの通 称で、1960年代、シリコンが主原料のIC(集積回路)半導体を扱うマイクロエレクトロニクス関連企業が一挙に進出し、一帯がハイテク産業地域として発展したことから、シリコンバレーの名で呼ばれるようになった。現在は、インターネットの急速な普及などを背景に情報関連企業が多く立地し、むしろ「ネットバレー」の名がふさわしくなっている。

  • アバブネットデータセンター
  • PAIXネットデータセンター
  • サニベール市役所
  • CNNセンター
アバブネットデータセンター

8月4日、シリコンバレーにて調査。アジア担当役員・呉欣玲氏、KDD社員・折居章雄氏の協力を得た。

最大手のデータセンター

アバブネットデータセンターは、米国のインターネット向けデータセンター業界の最大手として知られ、1996年の設立。現在、アメリカ国内17か所、ヨーロッパ2か所、アジア1か所にセンタ一綱を展開しており、アジアのセンターは日本に開設されている。
同社は、大規模なデータセンターと最新のノウハウ、さらに数多くのインターネット接続業者との相互接続によって回線トラブルを解消したレベルの高い接続環境を提供しており、ユーザーは約1000社。内訳は、接続業者、ソフト提供業者、通 信事業者がそれぞれ3分の1ずつを占める。
容量は600ギガで、うち1ギガをKDDが所有。従業員は500人。月商は約6億円、年商は72億円にのばる。
大容量のデータセンターの有効性としては、情報を集中させることにより良好な接続状祝を提供できること、相互接続の実現により回線トラブルを防げることなどが挙げられるという。

PAIXネットデータセンター

8月4日、シリコンバレーにて調査。アバブネットの系列会社である。マネージャーのロビン・マッカーソン氏ほか2人と、アバブネットデータセンターにひきつづき、KDD社員・折居章雄氏の協力を得た。

必要なユーザー数

PAlXネットデータセンターのユーザーは約110社。内訳は、接続業者90社、ソフト提供業者10社、通 信事業者10社であるが、最低限これだけのユーザー数がなければ、ビジネスとしては成立しないという。容量 は192ギガ、うちKDDは155メガの回線3本を所有している。従業員は100人。

サニーベール市役所

8月4日、シリコンバレーにて調査。システムネットワーク担当マネージャーであるレーランド・バンディバー氏の協カを得た。

インターネットと行政サービス

サニーべ一ル市は人口13万人で、シリコンバレーの中心部に位置している。シリコンバレーは半導体関連企業が多く立地することで名を知られたが、現在では情報通 信関連企業の比重が大きく、行政の分野にも情報通信技術が積極的に生かされており、インターネットを活用した行政サービスでは世界の最先端を行く市のひとつである。
現在、サニーべ一ル市がインターネットを利用して進めている行政サービスは約20項目で、公共施設の利用申請、建築確認申請など、月に70~80件を処理している。
サニーべ一ル市役所はワンストップサービスの体制をとっており、市民は市役所一階の窓口ですべての用件を済ますことができる。市民の用件に応じて担当職員が窓口に赴き、必要な手続きや対応を進めるというシステムである。インターネットの活用で、市民が市役所に足を運ぶ手間とともに、職員が窓口に顔を出す手間も省かれることになった。
こうしたインターネットの活用は、市議会の強い意向によったという。なお、市議会は議員7人の体制で、週1回ずつ議会を開会している。
インターネットによる情報開示も進んでおり、市議会に提出される議案や資料などは、個人のプライバシーにかかわるものを除いて、原則としてすべてが開示されている。市民と市議会がまったく同時に情報を共有することで、場合によっては議事進行が混乱することもあるというが、情報面で議会が市民を出し抜いてはならないというのが基本的な考え方である。正確な情報が市民に伝わっていないことによる混乱の方が、より重大であるという。

効果と運営

サニーべ一ル市役所では、申請書の受付や証明書の発行などをインターネットで行うことにより、事務がより効率的になって行政サービスの向上が図られた。また、蓄積された情報をいくらでもさかのぽって閲覧できる点も、インターネットの利点という。職員サイドからも、市民に応対する時間が少なくなった分、勤務の効率がよくなり、生産性が向上したとの評価も出ている。
経費の面でも、手続きに要する用紙類を印刷する必要がなくなり、用紙やコピーの節約に結びついている。ホームページの更新など管理作業に要する時間は週15時問前後で、学生アルバイトで十分に対応できる作業量 である。
各種施設の利用料金などの支払いには、やはりインターネットを利用し、所定のカードナンバーを打ち込むだけで手続きができる。市民のプライバシーを保護するため、セキユリティ用ソフトを独自に開発したという。
同市はシリコンバレーの中央部とあって、全6万世帯のパソコン普及率は約8割。ほかに図書館に30台、学校や地域のホームセンターにもパソコンが設置されている。アメリカ合衆国やカナダにおける平均的なインターネット世帯普及率は50%前後とされており、パソコンの普及がサニ一べ一ル市のインターネット活用を可能にしているといえる。

CNNセンター

8月6日、アトランタにて調査。現地在住の通訳・内藤路子氏の協カを得た。

対象エリアは210か国

CNNは世界的に知られたニュース専門テレビ局で、設立は1980年。アトランタのスタジオから、アメリカ国内170万世帯を対象に、24時間ニュースを放送することでスタートした。設立時の社員は200人。1985年に黒字に転じ、以後順調に社業を伸ばしている。
設立20周年にあたる2000年現在、対象エリアは210か国、2億世帯となり、うち1億5100万世帯がCNNの放送を受信。ニュースは9か国語で配信されている。世界に35の支局があり、系列会社は約800社、社員数は4000人にのぽる。
CNN発展の要因としては、1日24時間、いつでも生中継で歴史の目撃者になり、世界を左右する大きなできごとを桟敷席で見ることが可能だという点が、まずあげられるという。

インターネットによるニュース提供

CNNは1995年からインターネットによる24時間ニュースの提供を行っており、12のウェブサイトを運営している。うちひとつのサイトは日本の朝日新間社と提携し、日本のニュースが流されている。CNNは現在、インターネットの分野ではこうしたニュース提供を行っているのみで、それ以外の活用はなされていない。

調査内容

3)宇宙開発の現状と展望について

今回の調査では、ジョンソン宇宙センターの見学も行い、アメリカ合衆国における宇宙開発の現状と展望に触れることを得た。調査の2大テーマであるNPOとITからはやや離れるものの、わが国の宇宙開発にも重要なかかわりをもつ施設であり、特別 に見学を許可されて得た貴重な知見を報告するために、ここに項目を立てて述べておきたい。

  • ジョンソン宇宙センター
ジョンソン宇宙センター

8月9日、ヒューストンにて見学。同センターに重要なかかわりを持つ在米邦人の協カで、一般には公開されない場所も特別に見学することができた。

スペースシャトル

ジョンソン宇宙センター内にはスペースシャトルのコックピットや、日本宇宙開発事業団の宇宙開発実験モジュール「きぽう」が展示されており、特別にその内部を見学することができた。
また、宇宙飛行士の訓練も見学したが、100×50メートル、水深12メートルのプールで1回6時間の訓練が行われる。訓練中の食事は肩に装着した容器内の流動食で済ませるなど、きわめて過酷な訓練であり、宇宙飛行士としての体力と精神カが極限状態で鍛えられていることがうかがえた。

実験モジユール「きぼう」

宇宙開発のシンボルとも呼ぶべき国際宇宙ステーションは、2006年(平成18年)に完成が予定されている。高度約400キロメートルの地球周回軌道につくられる多目的有人施設で、実験、観測、居住、電力供給などが進められる。16の国家が参加し、最先端の科学技術を駆使して宇宙開発を行う国際的なプロジェクトである。
ジョンソン宇宙センターに展示されている「きぼう」は、国際宇宙ステーションに構築される日本の実験モジュールで、実験スペースなど4つの区画からなり、最大4人まで搭乗できる。宇宙飛行士が長期間活動できる有人施設としては日本初のもので、国際宇宙ステーションのなかでは最大規模の有人施設となる。
宇宙開発事業団は今年5月、筑波宇宙センターで「きばう」の地上実験を行い、宇宙飛行士が軌道上で機器の交換などの保守作業ができるかどうか、宇宙飛行士の視点から確認が行われた。「きばう」は今後、前後3回にわたって打ち上げられ、宇雷空間にわが国の宇宙開発技術を花開かせることになる。

字宙開発の展望

関係者の特段のご高配により、スペースシャトルや実験モジュール「きばう」の内部を見学できたことは、今回の調査における予想外の収穫であり、各国が協カして進めている宇宙開発の重要性と可能性を認識する得がたい機会となった。
また、とくに21世紀を担う若い世代や子供たちが宇宙に夢を馳せることは、単に宇宙開発のみならず、国際平和や人類融和を実現するためにも必要不可欠なものであると実感された。宇宙という大きなテーマを視野に入れることも、子供たちの夢を育む県政をめざすうえで重要なことであると判断される。

調査のまとめと今後のとりくみ

1)NPOと行政の協働について

NPOの支援

今回の調査では、アメリカ合衆国においてNPO活動が州政府の政策決定の一部に組み込まれていることが痛感された。地域住民にとって、NPOは自分たちの意見や意志を政策に反映させる機関であり、その一方、政府にとっては政策を実現させる機関であるといえる。わが国においても、地方分権から地方主権へ、さらに住民自治の確立へという大きな流れを確実なものにするためには、NPO活動の推進が不可欠であり、そのための環境づくりが急務である。
具体的には、とくにNPOの活動を支える民間のサポートセンターを設立することが必要である。NPOが法人として適切に運営されるための指導や、財政基盤の弱いNPOへの財政的支援を民間のサポートセンターが進めることで、わが国のNPO活動は本格的なものに育ってゆくと判断される。また、NPOの事業に関して、申請や運営を適正に審査する機関も設置されなければならない。
民間サポートセンターのエリアとしては、県に1か所では業務の殺到が予想され、また遠隔地が不便を強いられるため、県民局単位 で設置されることが望ましい。設立準備から設置、さらに設置後一定期間は、県がセンターに対して財政面 も含めた支援を行うべきであるが、将来的には独自に財源を確保できるシステムづくりが必要である。

税制の改正

財源に関していえば、わが国の税制を改正する必要も再認識された。現在の国税中心の税制では、国民の税はいったん中に集められ、そこから地方に分配される。しかし、この状態では個人であれ企業であれ、納税者はみずから納めた税金が地方のために役立っているという実感をもてず、そのため仮に財源を与えられたとしても、それを活用するノウハウを身につけていない。
アメリカでは、50州のうち4州が消費税を徴収しておらず、これらの州においては州政府が最低限の行政サービスを行うだけで、そのほかのサービスは民間の手で進められている。これを支えるのがNPOであり、財源の確保と活用もノウハウが確立されている。こうした徹底した認識をつちかうためにも、税制改正は必要である。
また、アメリカ合衆国において企業が評価される基準は、その企業が社会にどれだけ貢献しているかということであり、具体的には、雇用の創出、地域社会への利益の有効な還元、この2点にかかっている。事業によって得た利益を税金として還元するか、NPOの支援という形で還元するか、事業家はいずれかを選択することになる。
企業によるNPO支援が進められるためには、税制優遇措置が大きな役割を果 たしている。わが国のNPO法では税制優遇に関して何の措置も講じられていないが、平成13年に予定されている税制見直しの際には優遇措置が盛り込まれるべきであり、そのための働きかけが不可欠である。
アメリカ合衆国において、地域住民がNPOを通じて学校や子供博物館を設置、運営することが可能なのは、企業の寄付など財源を容易に獲得できるシステムが完成しているからであるということを、とくに強調しておきたい。

NPOと教育制度

チャータースクールの調査では、わが国の教育制度に対する示唆も多く得られた。まず、NPOの手で設置、運営されているチャータースクールが、独自の教育方針をもちながらも、地域の教育施設として正当に位 置づけられている点が、わが国の教育制度に比べると驚異的なことといえる。
チャータースクールにおいては、何のために勉強するのかという目的意識が明確にされている。社会のなかの個人のあり方が教えられ、社会で生きるための実践と体験が徹底的に進められる。教師と生徒4~8人がチームを組み、さまざまな社会活動を経験するサービスラーニングは、わが国の教育にとっても重要な参考となる。
文部省は来年度から、学級崩壊など学校の危機的状況に対応するため、教師の社会研修や小中学生の奉仕活動など、社会に開かれた教育をめざす方針と伝えられるが、こうした試みはまさにチャータースクールのサービスラーニングで実践されているものである。県の教育界においても、独自に実施が検討されるべきであると考える。
また、子供博物館はすべて参加型であり、体験に重点を置いて子供を育てるという点で、チャー夕一スクールと共通 の理念をもっている。物理、化学、数学、芸術など、幅広い分野に興味を覚えさせ、一方で社会性を身につけさせる博物館のあり方は、単に幼少年期にとどまらず、地域社会が一人の人間の生涯教育に貢献する施設を所有することの大切さを示している。
わが国でも今後、教育や青少年育成を目的としたNPOが増えてくるものと予想されるが、そうした需要のために公共施設のあり方を見直し、活用されていない施設を提供するなどの措置が必要になると考えられる。

2)情報技術の集積と活用について

情報インフラの整備

カリフォルニア州のサンタクララバレーが半導体産業の集中によってシリコンバレーと呼ばれるに至った経緯はすでに述べたが、シリコンバレーの例は県の経済にも重要な示唆を与えてくれる。
県においては現在、シャープ株式会社三重工場をはじめ液晶関連産業14社が多気町を中心に立地している。液晶はパソコンや携帯電話など情報関連分野で幅広く使用されており、液晶産業、すなわちクリスタル産業の集中するクリスタルバレ一が県内に誕生することが望まれている。
また、次世代情報ネットワークに対応した情報拠点づくりを進める志摩サイバーべ一ス・プロジェクトも打ち出されており、21世紀の県経済を左右するものと位 置づけられている。
こうした構想の実現のためには、情報関連インフラの整備が不可欠であるということが、今回の調査で得られた結論である。情報インフラの中心をなすのはデータセンターであり、情報交流拠点となる施設を立ち上げることで、情報技術を扱う最新産業の集積地を形成することが可能になる。
クリスタルバレーも志摩サイバーべ一スも、構想実現のためには条件整備、環境整備が積極的に進められなければならない。また、液晶産業の関連業者、あるいは接続業者やソフト提供業者、通 信事業者に対してどのような好条件を提示できるか、それを探ってゆくことも要請される。

インターネットの活用

行政サービスにおけるインターネットの活用では、情報の開示のほか、公共施設の使用申請や建築確認などの手続きなどに大きな可能性が認められるが、さらに詳しい検討が必要となる。さらに、インターネット活用の前提となるパソコンの普及や接続料などの問題も今後の検討課題であり、何らかの働きかけが必要と判断される。

3)宇宙開発の現状と展望について

宇宙開発と地域振興

「はじめに」にも記したとおり、アポロ17号の船長を務めたジーン・サーナン氏が今秋、三重県を訪れ、「国際大宇宙科学フォーラムMlE2000」で基調講演などを行うこととなっている。フォーラムは第1部「ジーン・サーナンワールド」が11月11日、四日市文化会館で、第2部「国際宇宙科学会議」が翌12日、三重大学で催される。主催はそれぞれの実行委員会であるが、県、県教育委員会も後援を行い、フォーラムの成功に一役買う体制を整えている。
こうした意義深いフォーラムが県内で催されるのは喜ばしいことであり、県民にとって名誉なこととも思われるが、この催しを将来的な地域振興につなぐことを考えてこそ、真の意義が生まれるといえる。そのためにも、たとえぱ先述したように、宇宙というテーマのもとに子供たちの夢を豊かに育む事業など、この機会に県政のなかで模索してゆくことも必要と判断される。